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題名のない

これまたグンと寒くなった東京。冬はまだまだこれからですなぁ。

生業で待ち時間があったので、観るのを先送りにしていたDVDを鑑賞。
2006年のイタリア映画「題名のない子守唄」。
監督は「ニューシネマパラダイス」や「海の上のピアニスト」のジュゼッペ・トルナトーレ。
実は自分、この監督の映画を観るのは初めて。どうも涙腺をわざとゆるませるヒューマン映画監督の印象があったのだが、この映画はどうもそういったものとは装いが違う、という噂を聴いてそれならと借りてみたのだ。この作品、2007年のヨーロッパ映画祭では数多くの賞を受賞しています。

東欧ウクライナからイタリアへやってきた女性イレーナ。
彼女はとあるアパートの金細工職人アダケル夫妻を執拗に気にし、アパートの掃除婦を経てアダルケ家の家政婦になる。その一人娘テアは防衛本能に障害を持っていたが(転んでも一人で起き上がれる事ができない)イレーナとテアはやがて心を通わせるようになる。そんな交流とは裏腹に、イレーナはアダケル夫妻の留守を狙い、家の中を何かを探すかのように調べ続ける日々を続ける。
ある日、イレーナが家に戻ると家の中は滅茶苦茶に荒らされていた。それは彼女の過去を知る男が彼女を追ってきた証拠だった。。。

と、こう文章で書くと手に汗握るサスペンスミステリーのようだが、爽快さは全くなく、冒頭のショッキング始まりから全編に至るまでとにかく陰鬱で重い重い。
色をなくしたイタリアの街は、皆が思い描く陽気なイタリアとは一線を画し、目を覆うようなバイオレンスや性描写(日本ではR15指定だったそう。血の出具合は正にイタリアンホラー的)、そして何より自分勝手な主人公の振舞いにともかく苛立たせられる。

しかし主人公の過去は悲惨。
貧しいウクライナから夢を見てイタリアに来たものの、どうにもならぬ「地獄」に引きずり込まれ、其処から逃げ出した後も、背負った重荷から逃れられずいるばかり。
なんとかこんな自分でも救ってくれる光を見つけたい一心で彼女は、傍若無人ながらも行動に出る。それが実はまるで見当違いだったとしても。。。
細かく書くと物語の核心に触れてしまうので割愛するが、この作品、ミステリーとしては物語は破綻している箇所も多く、「衝撃のラスト」とうたわれた結末も期待したような大きな謎解きはない。
つまりはミステリーとしては失敗作だと思う。
しかしながら、ジャンル映画ではなく、先に書いたように「とあるボロボロに堕ちた女性が、贖罪しながら何とか光を探しだそう」とする物語として観れば非常に心に突き刺さるものであり、僕はそこに感銘できました。

「母の愛はいつも強く揺るぎないものなのです」、と予告編の冒頭で監督はコメントしているが、この作品で見える愛とは、決して通常の「親子の愛」ではなく、「埋められない穴を持った2人」を繋ぐもの、に僕には思えました。
ともかく重くバイオレンスですが、底辺にはヒューマンなテーマが流れる、なかなか興味深い、好きな映画でした。
興味ある方はぜひ。

しかしこの予告編じゃとてもバイオレンスには見えないわなぁ、、
この雰囲気期待して観た人は度肝ぬかれますのでご注意を↓





こういうの作るのならジュゼッペ・トルナトーレ、他のも観てみようかなと思いました。
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by joenakamura | 2011-01-07 22:48 | 映画 | Comments(0)