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白いリボン

冬か、と思うほど冷え込んだ水曜日。
雨模様の為、自転車は諦めて電車で出かけることに。
蒸し暑い車内。少し厚手のジャケットを羽織っていたお陰で汗がしたたり辟易。
汗がひけばまた肌寒くなる。困った季節であります。


昨夜は劇場で見ようと思って見逃していたミヒャエル・ハネケ監督の「白いリボン」をようやく鑑賞。
2009年カンヌのパルムドール作品。
いつものハネケ作品同様、ヒリヒリとした空気感・張り詰めた重さは健在ですが(カラーで撮影しモノクロへ変換したという映像は素晴らしく綺麗です)彼にしてはとても分かりやすく(説明しすぎな気もしますが)舞台設定を明確にした物語として描かれていたかと思います。

舞台は1913年の北ドイツのプロテスタントの村。
大地主で荘園主の男爵の元には多くの小作人たちが働いており、彼が実質的に村を支配しています。
物語はその村で教師として働いていた男のモノローグとして描かれていきます。

村のドクターの馬が何者かによって仕掛けられた針金によって転倒した事を発端に、小作人の妻の事故死、男爵の幼い息子への暴行、火事、ドクターと愛人の間に産まれた子供への暴行と、1年間の間に奇妙な事件が連続して続いていきます。
男爵の命により犯人探しが命じられますが犯人は見つからず、村は不穏な空気、疑心暗鬼に包まれていきますが、村人達は何事もなかったように心を押し殺して整然と暮らしていきます。

村で働く神父は権威主義的で、村で暮らす子供たちを厳格に指導し抑圧しています。
自分の子供たちへは過度な純潔を求め、従わない場合には鞭打ちなど重い罰を与え、ある日帰りの遅くなった娘と息子に「純潔さの証」としてその悪しき心が治るまで、と「白いリボン」を付けさせます。

時は経ち、第一次世界大戦が勃発。混沌とした物語はいつものハネケの作品と同じように何の解決も示さず終わります。(想像すれば誰もが事件の本当の理由が分かるよう全て説明されていますが)

観終わった後に公式サイトや様々なネットでの感想を読み、至る所に散りばめられたメタファーや(タイトルともなる「白いリボン」や「籠の中の鳥」等)この時代設定の先に続く人間の愚行(ファシズムやナチズム等)、イデオロギー、キリスト教と人間の関係、最後のシーンで後ろの席に座る神父の件などを深読みして解いていくと、この映画の恐ろしさがより理解できました。
残虐なシーンがほぼ映されないのに背筋が寒くなるのはハネケの真骨頂です。
(こういう所が評論家受けする要因とは思います。逆を言えば一般受けしないと言うことですが)
興味のある方はいろいろ検索してみてください。賛否含め色々ありますが興味深いですよ。


観終わった後のズドーンとした感覚は相変わらず。(これだけ鑑賞後の印象が毎回変わらない監督は珍しいと思います)
淡々と内臓をえぐられるような感触は、サスペンス・ミステリー映画の謎解きを期待したり、スカっと映画を楽しみたい人には長尺で苦痛でしかないかもしれませんが、誰にも「オススメ」する事のできないハネケ作品の中では一番オススメできる作品ではある思いますし、彼の代表作になりえる作品だとも思います。
僕的にはかなり傑作で、きっと日数を追うごとにより感銘を受けていきそうな気がします。
(但し嫌いな人は嫌いだと思いますけど。事実、映画評論家の町山氏は酷評していたようですし。)

カンヌ映画祭でのノミネートの常連ながらパルムドールのなかったハネケ。
今作のようやくの受賞で変態マゾ映画監督というレッテル(勝手に自分が思うだけですが)から
一般的な巨匠監督の仲間入りを果たしたようにも思えますが、きっと彼のこと、また次作は輪をかけて胸糞悪い作品を作ってくれるでしょう。



ミステリー仕立てな予告ですが全くサスペンスやミステリーでは無いですよ。
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by joenakamura | 2011-10-05 14:45 | 映画 | Comments(0)