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アミダサマ

結末近くまで読み進めながら、なかなか読了できないでいた沼田まほかる氏の「アミダサマ」を数日前にようやく読み終えた。
氏の著作を読むのは以前にブログにも記述した「彼女がその名を知らない鳥たち」に続き2作目だが、「彼女が・・・」がカップルの小さな心の世界を濃密に描いたサスペンスだったのとは変わって、今作は一人の少女ミハルが現れたことで次第に暴かれ崩壊していく人々の心の姿を描いたSFホラーファンタジー小説といった趣であった。

「コエ」に導かれて廃材置き場に足を踏み入れた若者と住職。廃棄された冷蔵庫の中を開けると裸の少女が入っていた、、、という導入部は刺激的で一気に興味をそそらる。徐々に崩れていく人々の描写、特に住職の母親、千賀子がミハルに執着し壊れていく様は背筋が寒くなる恐ろしさがあった。
「コエ」を聞く能力を持つ若者、悠人がミハルに惹かれていく理由がどうも希薄であったり、ミハルの出生やそれに伴う事象が何だか投げっぱなしのままであったりと腑に落ちない処も多々あったが、派手な展開を極力抑え、淡々と人の心の狂気綴る文体は好感が持てた。超常現象や霊的なものはあくまで物語のスパイスで、著者は「彼女が・・・」と同じように人間の心の奥底の闇が描きたかったのであろう。「アミダサマ」というタイトルが示すように、登場人物の住職が「阿弥陀如来」について語る部分が印象的だ。元僧侶であった著者だからこそ書ける部分であろう。
(検索していたら、その部分を転載しているページを発見→浄土真宗本願寺派 長明寺のHP内書籍案内「アミダサマ」

些か駆け足な後半部分とスッキリとしないラストには賛否もある処だろうが・・・。


純真無垢な子供が(もしくは子供の姿を借りたもの)実は恐ろしい存在であった、という設定のホラー作は古今東西で数多くある。
映画で言えば、悪魔の子ダミアンを描いた「オーメン」シリーズやSF小説の古典を映画化した「光る眼」、子供が大人を殺戮するカルトホラー「ザ・チャイルド」、近年でいえば「エスター」やミヒャエル・ハネケの「白いリボン」もそうだろう。数えたらキリがないほど。

しかしながら残虐な事件の低年齢化のすすむ現代では、さして驚く事もなくなってきてしまった「恐ろしい子供たち」の存在。一番恐ろしいのは、そういったことを驚かなくなってしまった事のような気がしないでもありません。

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by joenakamura | 2012-03-16 12:21 | 小説 | Comments(0)