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スーパー!

先週、生業の待ち時間にDVDでアメリカ映画「スーパー!」(2010)を鑑賞。

素人の冴えない男が神の啓示を受け手作りのスーツをまといヒーローとなる、というちょっと先に公開されてヒットした「キック・アス」を思わせる内容ながら、何とも言えぬセンチメンタルに満ちた傑作でとても心を動かされた。

中川家のお兄さんに似た風貌のレイン・ウィルソン演ずるフランクは、何もかもウダツの上がらない男ながら、ひょんなキッカケで同じ職場で働く薬物依存症から立ち直ろうとする美女サラ(リヴ・タイラー)と結婚する。
しかしながら、また薬物に身を染め出したサラは冴えないフランクを捨て、ドラックの売人ジョック(ケヴィン・ベーコン)の元へ去っていってしまう。
失意のフランクは、キリスト教の啓蒙ヒーロー番組に感化され「クリムゾンボルト」として街の悪の成敗、そしてサラを取り戻す決意をする。
「クリムゾンボルト」の活躍はニュースとなり、それに同意したコミックショップで働く女性リビー(エレン・ペイジ)が程なくして相棒「ボルティー」となり、2人はジョックの家へ乗り込んでいく。


こう書くと痛快なアクションヒーロー物にしか思えないストーリーだが、全編にコンプレックスの塊で自分自身に失望していたフランクの哀しさがじっとりと横たわっている。
笑える描写もあれど、「クリムゾンボルト」が街の悪を成敗する様はリアルでゴアだ。
映画館での列の順番を割り込んだカップルの脳天をレンチで殴る様は「やりすぎだ!」と眼を覆うようでいて「そうそう!そんな奴は叩きのめしてしまえ」と言う感情を沸き起こさせる。
クライマックスのジョックの家での殺戮シーンは何とも凄まじく、暴力とは正義とは何ぞやと思わされる事必至。

正義として鉄拳を振るう「クリムゾンボルト」ことフランクの姿が爽快に思えないのは、フランク自身が実は「こんな事をしてもきっと何の意味もない」とうっすら感じている、と思わせるから。
人生で何もいい事が無かったフランクが、一瞬だけでも自分を認めてくれたサラを取り戻す為(実際、フランクに嫌気がさし自ら家を出て行ったのだが)、その行為を正当化させるためにヒーローとして暴走する(それも「神に選ばれた者」であると理由をつけ)その姿は誰もが抱えている闇にシンクロしてくるのである。「タクシードライバー」のトラヴィスのように。

先述の「キック・アス」も冴えない学生がヒーローになろうと奮闘する物語である。
原作のコミックスはかなり残酷な話らしいのだが(未読)、映画ではバイオレンスに満ちた描写がaありつつも、胸をスカっとさせる青春ストーリー的なな趣があった。
しかしながらこの「スーパー!」はそうはさせてくれない。
ポップでコミカルな映像を交えながら見終わった後に胸に何とも言えぬ穴を開けてくれるような、僕にとってはそんな映画でありました。(コミックのオープニングは残酷ながらかなりポップで面白いです)

ゴアな描写含め万人にオススメの映画ではありませんが興味あれば是非。


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by joenakamura | 2012-03-26 18:06 | 映画 | Comments(0)