白い扉
ヴィルヘルム・ハンマースホイという19世紀のデンマークの画家が好きである。
すべての絵を見たわけではないが、彼のその作品のほとんどが室内をただ淡々と描いたものばかり。人物が居たとしても顔は見えず。ただただ静かにトーンの押さえた色彩の中にドアや窓、家具がひっそりと佇んでいるだけだ。
その圧倒的な静寂さは、陳腐な言い方だが、まるで死後の世界のようだ。特に下の絵「白い扉、あるいは開いた扉」を見たときは上部のゆがんだ扉がまさに「どこかへの扉」のように見えてゾゾゾと背筋が冷えたものだ。
実はこの歪みはキャンバスの緩みを貼りなおして生じたもので意図はないらしいが、言いようのない不穏さは何か見えない「あちら側」を描いてる気がしてミゾミゾするのである。
同じく好きな映画監督、ミヒャエル・ハネケの2012年の「愛、アムール」は、話としては痴呆になっていく妻とそれを見つめる夫の物語なのだが、彼らの部屋はまるでハンマースホイの絵を髣髴とさせるもので、モロにハネケがハンマースホイを意識してるのがよくわかる映画だった。(というか部屋が主人公のようだった)
さてファニーゲームをまた見るか。
by joenakamura
| 2017-04-21 11:22
| アート・デザイン